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大阪地方裁判所 昭和39年(ワ)5115号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【争点】原告は、自家用小型乗用車につき被告保険会社との間で、保険金額六〇万円(車両担保)の保険契約を締結していたが、右乗用車を運転して国鉄軌道を横切る踏切上に至つたとき、列車と衝突したため、右乗用車は大破し五〇万円の損害をこうむつた、と主張して、被告に対し保険金の支払を求めた。これに対し、被告は、「(1) 本件自動車保険契約は、自動車保険普通保険約款にもとづき締結されたものであり、約款四条は、下の場合においてはその間に生じた損害に対し填補の責に任ぜずとして、同条四号に「保険の目的が法令または取締規則に違反して使用又は運転せらるとき」と掲げている。

(2) そして本件交通事故発生は、原告が保険の目的である事故車を左記<省略>のごとく明かに道路交通法に違反して運転した重過失にもとづくものであるから、被告は約款四条四号により、損害填補の責任がない。」と免責を主張した事案である。

【判決理由】(一)(1) <証拠>ならびに弁論の全趣旨によれば、前記争いない保険契約の締結は、被告主張の自動車保険普通保険約款にもとづくものであり、右約款には、被告主張のごとき免責条項があることが認められる。

(2) しかし<証拠>によると、約款第三条第一号但書には、運転中における運転手または助手の重大な過失によつて生じた事故を被告の免責事由より除外する旨が規定され、したがつて、約款四条四号の規定と三条一号但書の規定とが、形式上外観上競合する場合の調整が問題となる。

(3) 右両条項の関係を、右各規定の文言と趣旨、自賠法一四条、商法六四一条の各規定との対比、および自動車の所有使用より生起する危険を右危険に出会うことあるべき多数人に分散して、右集団より徴収した資金をもとに、現実に危険に遭遇したものの損害を填補するという、通常予測される蓋然性を前提とする保険制度の目的より考察すると、社会悪を助長し、善良な保険契約者に悪影響(経済的、心理的)を及ぼすところの、公序良俗を逸脱し、社会的に非難すべき違法行為と評価できる態様の行為、すなわち例えば重大かつ明白な無謀操縦、整備不良で運転停止処分中の自動車の運転等が、保険契約者被保険者あるいは運転手によりなされたときは、行為主体が運転にあたらない保険契約者等であろうと、運転していた保険契約者であろうと、あるいはその被用運転手であろうと、約款四条四号により、保険会社は免責され、右の程度にいたらない法令または取締規則違反による事故の場合は、約款四条四号の文言にもかかわらず、保険会社は免責されないものと解するのを正当とする。

(4) したがつて約款三条一号但書の「運転中の運転手または助手の重大な過失」を免責事由から除外する旨の規定は、単一の約款中の別条に定められている同約款四条四号の前記趣旨との対比より、運転中の運転手の重過失による事故のすべてが免責より除外されることを定めるものではなく、運転手の右重過失事故が保険による填補を拒絶すべき前出社会的に非難すべき違法行為にもとづくものと明白に評価されるときは、免責除外を排除されることを約款上当然留保しているものというべきである。

(二) <証拠>ならびに弁論の全趣旨を総合すると、被告主張(三)(2)のイないしニの各事実が認められる。そして右認定事実によると、原告は、鉄道線路と交叉する踏切に入るに際し、汽車が接近しつつあるのを容易に予見できるのにもかかわらず、道路交通法三三条に定める踏切直前における停止および安全確認義務を怠り、そのまま線路上に進入し、折から警笛を鳴らしつつ進行してきた汽車に事故車を衝突させ、もつて汽車の往来の危険(具体的危険)を生ぜしめたことが明かであり、右事故は原告の社会的に非難さるべき違法な事故車無謀運転によるものというべく、前出一、(一)(3)説示の約款四条四号に規定する被告の免責事由に該当する行為によるものといわざるをえない。(今枝 孟)

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